甚句
鹿角地方に古くから伝わる盆踊唄の鹿角甚句は、季節を歌いこむことによって神をたたえる古い民謡形式のもので、荘重なしらべであるが、町踊りの甚句は軽快で、各曲のなかでは比較的やさしい。
- 甚句おどりの始まるときは へらも杓子も さぁ 手につかぬ
- 踊り出た出たお庭が狭い さっと拡げろ さぁ 太鼓打ち
- 踊り踊らば三十がさかり 三十過ぎれば さぁ 子がおどる
花輪よされ
踊りは甚句と同じく、高低の差のはげしい振り付け。
- よされサァ よされ駒下駄緒が切れた よされサァァ…
- 誰が立てたやら又切れた よされサァァ…
- 円い玉子でも 切りよで四角 物も言いよで 角が立つ よされサァァ…
おやまこ
オヤマコは江戸期における吉原や芝居茶屋で用いられた隠語で、三人連れの客のこと。この唄は町唄ながら農村部にも広く分布し、歌詞も多く存在している。
- おやまこしゃんりん どこから流行た 江戸の吉原 仲の茶屋
- どうせ買うなら 二足のわらじ 共にはいたり はかせたり
- どてらじゃ寒かろ 着てゆかしゃんせ うらの木小屋に着がえある
花輪よしこの
幕末ごろ、葛飾の飴売りの唄に発したヨシコノは江戸の盛の場のヒットソングとなり爆発的に全国に流行。今も各地にヨシコノの名のつく唄が残されている。
- 花輪よしこの どこでも流行る ましてこの町はなお流行る
- 踊り踊らば しなよく踊れ しなに惚れても 嫁による
- 揃たそろたよ踊り子そろた 稲の出穂より よくそろた
塩釜
町おどりには港の名を冠した曲が銚子、新潟、塩釜と三曲あります。おどりの曲の中では、塩釜が一番長時間演奏されます。
- 花輪町から 塩釜見れば お客もてなす四ツ手駕籠
- 末の松山 浪越すとても かわるまいぞえ 胸と胸
- 月はまんまる 夜はほのぼのと 心ぼそきよ 秋の空
毛馬内よしこの
三弦の糸が本調子だから本調子よしこのと言われたこともあるといいます。ヨシコノが二曲あるので、江戸時代、花輪通り、毛馬内通りの二つの行政区に分割されていたことに由来し、一つに花輪、いま一つに毛馬内の名を冠したものと思われます。
- 毛馬内よしこの どこまで流行る ましてこの町はなお流行る
- 浅い川なら 膝までまくる 深くなるほど帯もとく
- 逢えば気もよい 心もよいし おもきあたまも軽くなる
ぎんじがい
笛のメロディーがしっとりとして哀調に富み情緒がある曲です。笛のメロディーの品の良さや、運指法からすれば、花輪ばやしの古い曲からの転化ではないかと言われています。
- おおさえ おおさえ喜びあれや よそへはやらじといだきしめ
- 今日は いかなる吉日なるぞ 苦界はらして身の祝い
あいやぶし
唄が軽快なら踊りのテンポも早く、いなせでなかなか忙しい踊り。
- あいや 花輪の川まんなかに アヤメ咲くとは しおらしや
- 鮎は瀬につく 鳥ァ木の枝に 人は情けの下に住む
- あいやそれ 枕がかわる かわる枕に とがはない
おいと
毛馬内よしこのと同じく、豊年万作の振り付けと似通った踊り。
- おいと おいとの勝負は見えぬ 勝負わからぬ 西東
- おいと おいとの将棋の駒よ さしつさされつ夜明けまで
- 赤坂五丁目の やぐらの太鼓 打てやかけだせ 二部の消防
どっこいしょ
毛馬内よしこのと同じく、豊年万作の振り付けと似通った踊り。
- どっこいしょ どっこいしょの勝負は見えぬ 勝負わからぬ 西東
- どっこいしょ どっこいしょの将棋の駒よ さしつさされつ夜明けまで
- 赤坂五丁目の やぐらの太鼓 打てやかけだせ 二部の消防
豊年万作
舞扇を用いる華やかで賑々しい踊り。歌詞の五番に男山、剣菱という清酒の銘柄が歌いこまれている。
- いち富士 二鷹 三なすび タネトッテ 千歳万作 浜大漁 今年ァ豊年万作だ
- ふたつにふた節 穂を出して イソガシヤ 五尺あまりの稲のたけ 今年ァ豊年万作だ
- みっつ 見事な 稲の花 オサマリテ ごふくじゅうのじゅんきこう 今年ァ豊年万作だ
- よっつ せなかは 納まりて アリガタヤ どこの家でもニコカコと 今年ァ豊年万作だ
- いつつ 泉の男山 納まりて ケンビシヤ 飲んで足もとゆらゆらと 今年ァ豊年万作だ
ちょうし
昔踊られていて、今踊られていないものには新潟、カイナ節、銚子の三曲がある。銚子は唄と三味線の記録があり、昭和59年10月20日復元することができた。
- 銚子 そろえて お酌のないは 店に番頭のない如し
- 銚子 そろえて 盃コァいらぬ 主とわしとの口でのむ
- おせば気もゆく 押さなきゃいかぬ おせば気もゆく 屋形舟